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大学のeラーニングの実際を学ぶ研修 第5回 東北大学
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ISTUについて報告する渡部教授(右)と為川助手 |
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講義収録の実演をする為川助手。パソコンの上につけた小型カメラで講師の動画を撮影する。
| オンラインコースを提供し、eラーニングによる授業を単位認定している大学、大学院の担当者にeラーニングの実態を聞き、技術、コスト、教育効果を考えるメディア教育開発センター(NIME)の研修シリーズ「オンライン・コースの手法と戦略」は、最終回の第5回がNIMEで行われ、東北大学大学院の渡部信一教授、為川雄二助手が「全研究科規模のeラーニング」として東北大学インターネットスクール(ISTU)を紹介した。
ISTUは、国立大学で初めて全研究科でインターネットを利用した講義の配信を行う大学院として、2004年4月にスタートした。東北大学は教官2600人、学部学生1万1000人、大学院生6100人で、大学院の講義は1年で数千科目、数万講義に上る。将来は、インターネットで受講するだけで各研究科の修士号、博士号を取得することも可能になる。5年で講義の40%をインターネット配信することを目標にしており、この2年間で工学研究科の数十科目のほか、教育情報学教育部などで配信を開始した。
ISTUは、渡部教授の所属する教育情報学研究部がサポートしている。同研究部は「ITを活用した教育」の研究とISTUをフィールドにeラーニング研究を目的にしており、教授4人、助教授4人、助手3人の11人体制でISTU発足と同時に開設された。
◇ISTUの課題
渡部教授はいくつかの課題について報告した。
インターネット配信の対象については、当初・学外の「大学院」レベルの学生・世界中の研究者を志願する人・高度な専門知識を求めている社会人、主婦、高齢者、障害のある人――などが挙がった。しかし、1年間の議論の末、現在大学で受講している大学院生も対象にすることになった。渡部教授は「初めは、ネット配信をしたら今キャンパスで受講している大学院生は講義に出なくなる恐れがあるので使うべきでないという意見が強かった。しかし2600人の教官の協力を得るには、教官のメリットを考えなければならない。そこで出張などの場合、ネット配信することで休講にしなくて済むというメリットを考え、現在大学で受講している大学院生にも配信することにした」と説明した。
遠隔講義システムにはWebCTなどの既製品は使わなかった。理由を「カスタマイズしやすいものにしたかったが、既製品のカスタマイズは簡単ではなさそうだった。富士通が開発したシステムを1年がかりでカスタマイズしていただいた」と渡部教授は説明した。
ウェブ講義に講師の動画を入れるかどうかも、開始当初は議論になったという。学生対象に行った簡単な予備実験では、ほとんどの学生が「動画にリアリティがある」と答えたが、同時に「あまり動画は見ない」「音声だけでいい」という答えもあった。議論の末「動画中心にしておく方が発展性があると考え、動画中心に決めた。今の動画は講師の顔が中心だが、将来は工学系の実験、医学系の手術実習などの配信が大きな目標になるだろう」と渡部教授は話した。
リアルタイム型かオンデマンド型かでは、組織が大きいので統一は難しいだろうと考え、選択肢を可能な限り用意しようと、両方を採用した。
インターネット講義だけで単位や修士号、博士号の認定をすることについては「最終的に認定するかどうかの判断は、各研究科に任せる」と話した。
全講義の配信、全世界に向けた配信という目標を実現するには、全学の協力体制が欠かせないが、渡部教授は「2年たった今でも、先生方の協力が得られるか否かが最も大きな問題だ」と述べた。なかなか協力が得られない理由としては、日々の業務が忙しい、自分には関係ないという無関心、教育より研究が大切という意識、著作権の問題、また従来自分の講義を人に見せた経験がなかったので、公開には抵抗があるようだ、と分析した。
だが、渡部教授は、今は国立大学の独立法人化など改革の時期で、「先生方の考えも変わりつつあり、何かしなければという意識が生まれている。目標に『講義のインターネット配信を目指す』ということを盛り込む研究科も増えている」と報告した。また、ロースクールや公認会計士コースなど、これから開設する分野でインターネット配信の希望が多いと話した。
◇システムのカスタマイズとウェブ講義の作成
為川助手は実演を交えてウェブ講義作成について説明した。遠隔講義システムをカスタマイズする際のポイントは、▽膨大な講義を管理するため「研究科――科目―講義」という階層構造を導入する▽大学院生だけでなく、特定の単位だけ履修する受講生がいたりするので多様な受講形態に対応させる▽数万件の講義、数万人の受講者とい大量の情報を扱える操作性を持たせるーーに置いた。
講義をデジタル化するオーサリングツールは4社の製品を採用した。「リアルタイム収録機能」「アニメーション機能」などそれぞれが持つ機能は違う。為川助手は「それぞれ一長一短があるので、使い分けてもらうことにした」と話した。
収録はパソコンの上に小型カメラを据え、教員はパソコン上で、教材を提示したり、書き込みをしたりしながら、講義をする。サポートスタッフが収録した動画(教員の顔など)の圧縮、コンテンツ編集、講義登録・受講者登録をして、アップロードする。90分の講義の収録からアップロードまでは5時間25分を要することも問題で、今後改良が必要という認識を示した。
◇対面授業とeラーニング
フロアからの「リアルの対面講義とインターネット講義の関係をどう考えるのか」という質問に対して、渡部教授は「当初は、講義は対面で行うべきでeラーニングは効果が少ないという意見が多かった。しかし、海外や遠隔地、社会人などeラーニングのニーズがあることもまた事実」と話した。
最後に、インターネット化を促進するには「大学の基本方針としてインターネット化を推進することを明確にすることが重要」と渡部教授は訴えた。
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